農業生産法人 株式会社CoCoRoファーム 就労継続支援A型 CoCoRo事務所
代表 堀川佳恵さん
もともと農業に興味があったのですが、両親の希望もあり、地元大分で教員になりました。 結婚を機に宮崎へ移住し、特別支援学級を担当する中で、障がいを持つ教え子達が社会に出ることの難しさを実感しました。この現状をなんとかせねばと、7年前に思い切って福祉事業所をスタートさせました。教え子達の居場所を作る、という一心でしたね。
最初は農作業の割合は少しでした。 その頃、農家の佐々木さんから栽培指導を受け、農業と福祉の連携をするにはどうしたらいいのかなど、それぞれの立場で熱く議論を交わすことが増えました。2~3年経った時、本気で農業をやってみようと決心して約2100坪の土地を借りて農業法人を設立しました。 障がい者施設でいきなりこの規模は無茶な挑戦でしたが、みんなに給料を払っていきたいから、どんなに大変でもこの栽培面積が必要だと考えたんです。 私は農業は素人ですが、管理者で入ってもらった佐々木さんに助けられています。
農業1年目はとても大変でした。 雑草抜きお願いしたら植え終わった苗まで全部抜いてしまい、150万円が一気に飛んでいったことや、トマトをちぎらせたらコンテナの半分以上が緑のトマトだったり、無くなったハサミが畑から出てきたりと驚くこともたくさんありました。 でも、それは私たちの指示の出し方の問題でもあり、たくさん学ばせてもらいました。 今はみんな農作物への愛情が芽生え、安心して任せられるようになりました。
ようやく軌道に乗り始めた2年目の秋、台風で農作物が大きな被害に遭いました。トマトは流され、ナスも水に浸かってしまい、茎をバッサリ切ることに。大事に育ててきた農作物がダメになってみんなガッカリと肩を落としました。 「花が咲いているのに切れません」と言うので、「生きるために切ってあげるんだよ。頑張れよって声をかけながら切ってね」というと、みんな納得して切り始めました。 その後、また復活した時に、「自分が声をかけてあげたから」という達成感を感じてもらえたのかなと思っています。
やって良かったの一言です。 毎日いろんなことがありますが、大なり小なりみんな失敗するから、今を頑張ればいい。利用者さんと一緒に成長している実感が持ててとっても楽しいです。 これからは加工品も作っていきたいし、休憩スペースの整備などもしたい。うちで学んだ子達を西都市の農家に一般就労に出すことで地域貢献にも繋げていきたい。地域全体で農業と福祉を循環していけたらと願っています。
休日にこっそり水菜をちぎると「社長、昨日、鍋食べましたか?採りかたが丁寧じゃなかったです。」と利用者さんに気づかれるんですよ、と笑う堀川さん。
農業生産法人 株式会社CoCoRoファーム
管理者 佐々木幸一さん
7年前、堀川さんが福祉事業所を始めた時にナス栽培の指導をしたのが出会い。 農業をしながらも福祉に興味があったので堀川さんと考えを理解しあえたというのが大きかったと思います。人手不足を障がい者で補うのではなく、CoCoRoファームでは全ての作業を利用者さんが行っています。 障がい者が生きていく中で農業は自分に合った仕事を自分のペースですることが出来る、素晴らしい世界だと思います。 収穫、管理、選別、野菜拭き、袋詰め、あらゆる作業が農業には詰まっています。高齢になって、農場には来れなくなったら自宅で袋詰めをしてもらえばいい。農業を通して、いろんな現場を作りたい、そう考えています。
1年目は作業をさせられている状態でしたが、今は自らやる作業に代わってきました。 作物への愛情もすごくて、虫がついたり元気がなくなってきたら、すぐ報告してきます。なんでも相談してくるし、こちらからのお願いも進んでやってくれます。他の事業所の方からも、スタッフと利用者さんとの垣根がないですねってよく言われますね。 気をつけていることは、必ずその人を見て、やりたくないことはやらせない、やりたいと思うことを伸ばしてあげることが大事だと思います。引きこもっていた子がしっかり仕事をしていて、保護者の方からも不思議がられます。責任のある仕事を任せることで自信が生まれ、将来の夢が持てるようになったと言っています。いい部分を伸ばしてあげることが私たちの役目ですね。
1年目は県外へ出荷していましたが、2年目から地産地消に方向転換し、すべて宮崎県内に卸しています。 やはり自分達が収穫した野菜が地元のお店で売られているのを見ると、みんな嬉しいし、やる気が出ます。朝採れの野菜がその日のうちに店頭に並ぶよう、鮮度にも気を配っています。規格外品も飲食チェーン店が買い取ってくれたりと、ロス率も低くしています。 「無駄な命はない」という信念を持つことが大事です。
安心して現場を任せられるようになってきたので、今後は規模を拡大していきたいです。 耕作放棄地も有効活用し、地鶏の養鶏などもいいですね。その仕事が好きな人もいるでしょうから。障がいを持つ方々が生きる現場をまだまだ広げていきたいと考えています。
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